最終日は理学療法士の林先生の講義からスタート。 午後から控えた認定試験に傾いていた気持ちは、林先生の講義の面白さに引き込まれて、気づけば前のめりの姿勢を先生に笑いながら指摘されてしまうほどだった。私の身体の歪みも一目で見抜いて的確な対処法も教えてくださった。
振り向けば理事長も笑顔、束の間の安息の時間。
このままずっとこの講義が続けばいいのにと思っていたが、穏やかな時間はあっという間に過ぎていってしまった。 独特の緊張感の中からスタートした認定試験。 一応自分の中で構成した認定用のメニューを用意していたのだが、他の受講者メンバーのいいアナウンスワードがあれば是非参考させていただこうなどと調子のいいことを考えていたら、まんまとトップバッターに指名された。
心の中を見透かされたような、恐怖の瞬間再び。鏡を背に、受講者メンバーと向き合う。 たった数メートル、みんなより前に立つだけなのに感じるこの距離感と緊張感。 練習を重ねた動きに、要点を押さえたシンプルなコメントを添えてエクササイズを進めた。 シンプルというよりは、それが今の精一杯。動きのチョイスも基本的なもの、のみで。
これも今の精一杯。でもこれは基礎の動きを自分にしっかりと落とし込むことが私の最大の課題だったことと、 その結果を、しっかりとジャッジしていただきたいという想いでもあった。
決して満足できる内容ではなかったし、緊張感で喉の奥がずっと熱く途中声がかすれたりもした。 思い描いた通りの動きにならない場面もあった、が。これが今の私の実力だった。
試験中ほぼ真っ白だった頭の中の片隅に、時々ちょっと戸惑いながら動く受講者メンバーの姿が残っていた。 試験は次々に進んでいった。一緒に肩を並べて学んだメンバーが前に立った途端に指導者の顔に変わる。 動きの美しさ、柔軟さ、コメントのバラエティはさすがで、普段は他のプログラムを指導するインストラクターであることを改めて実感する。
全ての試験が終わった後に何とも言えない疲労感を感じた。 緊張感から?でも本来ならそこから感じられることはおそらく開放感。 それなら少し居心地のよくないこの感覚は何なのか。
まだ少し息の上がっている私達に向けて、お疲れ様でした、の挨拶の後に少し間を置いて理事長が言葉を発した。
美軸ラインエクササイズとは、強く美しい軸を自分自身の中に作り上げていくこと、 そしてそのことがきちんと生活の中に繋がっていくということ。 この事ををエクササイズを通して私達は皆様にしっかりとお伝えしていかなければならない。
その言葉で私の中のパズルがカチッとはまり込んだような気がした。
繋げるという事。
私のエクササイズで戸惑っていたメンバーの表情、試験後の疲労感、この繋がりこそがエクササイズの中に不足していた要素だったのだと確信した。美軸のエクササイズの動きのひとつひとつに華やかさはない。
言ってしまえば地味な動きの連続と言えるこのエクササイズは、何を目的にどんな効果が現れるのかを想像できなければ継続は難しい。
動きに勢いがついた途端にその効果を生み出す事ができなくなってしまうという面まで持っている。 そしてその効果もすぐに目に見えて現れるものではなく、回数を重ねて自分の体に落とし込み、日常の動きに取り込めた時に初めて確信することができる。ここまでの繋がりを、私達はエクササイズという形で皆さまへとお伝えしていかなければならない。
認定試験で感じた疲労感とみんなの戸惑いの表情はこの繋がりを感じることができなかったから、感じさせることができなかったからだ。
何かを掴みきれない私達へどんな方法で、何を伝えて指導していけばいいのか。 帰りの電車の中できっと理事長は考えていたのだと、苦悩していたのだと思った。私の中で色々な事が今、繋がった。
2020年2月 美軸ラインエクササイズ 5期生 中村 理
Comments